極限から余極限をつくる手順

トポスは有限余極限を持つ」で概略だけ紹介した、余極限をつくる手順をまとめてみる。以下の話は全て任意のトポスで可能な構成になっているが、集合圏を思い浮かべればいいと思う。
P をパワーセット関手(反変、自己関手)、ε を P2モナド*1の余単位とする。ε の具体的な意味は、例えば集合圏だと

εS: S ─→ P2S
     p ├→ p が生成する単項フィルター

となる。用語「単項フィルター」の用法は

S の任意の元 p について、 {p} が生成する単項フィルターのことを言葉の濫用により p が生成する単項フィルターとも呼ぶ。

フィルター - 冪集合の上のフィルター - Wikipedia

に従った。

手順

  1. 余極限をとりたい図式 J を用意する。
  2. 図式 PJ を作る。
  3. PJ の極限錐τを作る。τ の頂点を t とする。つまり t = lim J。
  4. 錐 P2τ を作る。
  5. 錐 P2τ の底の各対象から極限錐の底の対応する各対象に射 Pε を追加する。
  6. 上でできた図式に対して極限錐の普遍性より、P2t から t への射 h が存在する。h を図式に追加する。
  7. 上でできた図式全体を P で移す。
  8. 上でできた図式に、Ph と平行な射 ε を追加する。
  9. 射の平行対 Ph と ε のイコライザーをとる。これが元の図式 J の余極限になっている。

この手順で実際に直積から直和を作った際の図式を貼っておく。元の図式 J は入ってないが、対象 a1、a2 だけの図式である。
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一部の(構成に必要ではない)射は省略してある。逆に、手順とは直接関係ない射も入っているが、それはイコライザーの普遍性が適用できることを示すときに用いる射で、余極限をつくるだけなら気にしなくてよい。

*1:継続コモナド