「点」全体は極限

集合圏のように、極限と余極限が常に存在する場合に、面白いことが言えるのでメモ。以下は集合圏で書くが
一般化は色々できると思う。
Sets を集合圏とする。任意の圏 C と任意の関手 J: CSets があるとする。J ∈ |SetsC|。J は Sets 内の図式と思ってよい。
Δを対角関手とする;

Δ: SetsSetsC.

Δの右随伴は極限をとる関手:

Δ ──┤lim. 

だから、任意の X ∈ |Sets| で

SetsC(ΔX, J) 〜 Sets(X, lim J)

となる。ここで、X = 1 (1点集合)とすると、

SetsC(Δ1, J) 〜 Sets(1, lim J) 〜 lim J.	(1)

さて、Δの左随伴は余極限である:

colim ──┤Δ. 

従って特に、1 ∈ |Sets| と任意の A ∈ |SetsC| で

Sets(colim A, 1) 〜 SetsC(A, Δ1)

となる。この式の左辺は、集合圏の終対象 1 (1点集合)への写像全体だから、やはり1点集合。ということで、右辺も常に1点集合になる。これは、Δ1 が SetsC の終対象であることを意味する:

Δ1 〜 1 (in SetsC)

これを (1) に代入して

SetsC(1, J) 〜 Sets(1, lim J) 〜 lim J

すなわち

SetsC(1, J) 〜 lim J. 	(2)

集合圏からのアナロジーで、終対象からの射を「点」と呼ぶことがある。それに習うと (2) の左辺は、対象 J ∈ |SetsC| の「点」の全体のことになる。それが J の極限と同型だというのが結論になる。

また (2) の式は J をブランクにすることで、関手の等式と思うこともできる:

SetsC(1, -) 〜 lim. 

このことが意外なのかどうなのかよくわからないが*1、左随伴をとって終対象を処理するというのが面白かったので書いておいた。

*1:個人的には意外だった