ある発散級数と補数

有名な式

1/(1-x) = 1+x+x2+x3+…

は、|x| < 1 のときに限り右辺が収束し等式がなりたつが、このエントリでは発散する場合しか見ない。
この式に x = 10 と代入すると、

1/(1-10) = 1+10+102+103+…

となる。左辺は普通に計算し、-1/9 を得る。右辺は発散しているが、気にせず 10 進法で表記してみる:

 -1/9 = …111111(10)

両辺を 9 倍すると、

 -1 = …999999(10)

となる。これはちょうど -1 に対する 10 の補数になっている。両辺に 1 を足すと、

0 = …000000(10)

となり、両辺は「等しい」。
10 の代わりに x に 2 を代入すると、

1/(1-2) = 1+2+22+23+…
     -1 = …111111(2)

となる。2 行目は 2 進法で表記した。これはよく目にする2の補数表記になっている。

この表記のいいところは、マイナス記号を一切出さずに済むところ。無限桁だということに目をつぶれば、引き算も全て足し算のルールで実行できる。掛け算も問題なく行える。割り算も多分大丈夫だと思う。
補数が単なる表記法ではなく、演算まで込めてうまくいくことの背景には、最初に出した等式がありそうな気がする。発散級数にも意味をもつ(場合がある)という一例になっているのかも。