あいうえおしりとりの圏(ただし定義が不十分)

しりとりの圏を書くのが流行っているようなので、便乗。どこが不十分かはここで。
できるだけ省略したくないので、文字はあ行に限定。あいうえおしりとりの圏。

定義

対象: あ行の各文字 (「あ行の各文字の集合」、「あ行」ではない)
射: まず、
恒等射 id(あ), id(い), id(う), id(え), id(お)
と、以下の射

f11 f12 f13 f14 f15
f21 f22 f23 f24 f25
f31 f32 f33 f34 f35
f41 f42 f43 f44 f45
f51 f52 f53 f54 f55

がある。
たとえば f12 と f33 は

   f12
あ  ->  い

   f33
う  ->  う

という射をあらわす。
さらに、以上の 5 + 25 個の射とそれらを任意につなげた(合成)ものが、あいうえおしりとり圏での射になる。
射の合成をやってみると、

   f12     f25
あ ---> い ---> お

     f12;f25
あ -----------> お

上の式は個別に書いたもので、射の合成の記号を使うと下の式になる。
射の合成ができない場合もやってみる。

   f12            f35
あ ---> い     う ---> お

接続部分が異なっているので合成できない。
この例を眺めていると「射が合成のルール」と「しりとりのルール」が対応していることがわかる。

射の新記法

唐突に、以下のような射の新しい書き方を導入する。
恒等射の記法は、

id(あ) "あ"
id(い) "い"
id(う) "う"
id(え) "え"
id(お) "お"

のような、一文字のダブルクォートした文字列。

f11 f12 f13 f14 f15
f21 f22 f23 f24 f25
f31 f32 f33 f34 f35
f41 f42 f43 f44 f45
f51 f52 f53 f54 f55

"ああ" "あい" "あう" "あえ" "あお"
"いあ" "いい" "いう" "いえ" "いお"
"うあ" "うい" "うう" "うえ" "うお"
"えあ" "えい" "えう" "ええ" "えお"
"おあ" "おい" "おう" "おえ" "おお"

のような二文字のダブルクォートした文字列。
合成した射は、接続部分の文字を「のりしろ」にしてつなげた文字列で書くことにする。

先ほどで出した例を新記法で書き直して見る。

  "あい"
あ ---> い

 "うう"
う ---> う

 "あい"  "いお"
あ ---> い ---> お

  "あい";"いお"
あ -----------> お

    "あいお"
あ -----------> お

下の3つの式は全部同じ射をあらわしている。
射の合成ができない場合は、

  "あい"         "うお"
あ ---> い     う ---> お

と、しりとりができないことがすぐわかる。
こんなところでどうでしょう。

しりとり圏の面白いなと思ったのは、

  1. 対象に内部構造が無い
  2. 普段データだと思っている文字列が射という関数っぽいものとして現れる

ところ。
特に2番目はセミナーのテーマ「少し違った視点で見れば、世界が面白くなる」のいい例だと思った。
というか、「登ってみたら全然違う景色が現れた」という感覚になった。